No 8
Date 2008・02・08・Fri
卒業制作の傾向例年この時期は、講師を務める大学で、卒業制作の採点を行います。
卒業制作とは、予算も規模も実現性も全く問われず設計出来る一生に一度の課題。 “社会に一石を投じる有益な建築の提案と、そこからの波及の検証”など、都市的規模の製作対象に挑むのが、ずっと昔の先輩から10年前の僕らまで当然でした。 でも最近は、時代のせいもあって、建築の力に夢を託す学生が少ないのか、 テーマ、対象、規模ともに、どんどん縮小傾向にあります。 今年もテーマの多くが住宅。中には一軒屋だけ、家具だけ、ひどいのは検討程度の 平面分割パターンに階段とベッドを記号的に入れただけの「豊かな(?)集合住宅」。 建築が敷地と用途という固有性から逃れられぬ以上、そのテーマの熟考と独創性が 何より大事なのに、そこをサッサと切り上げ、プレゼンだけは「完成です」としたり顔。 この背景には、実際の社会状況に加え、雑誌などメディアの影響もあるのでしょう。 公共建築は負の遺産とされ、昨今はほとんど建てられなくなってきた。 →雑誌は掲載出来る新築が相対的に住宅ばかり。 →当然『住宅しかないから』ではなく『住宅が面白いから』という切り方での編集。 →多くの学生が掲載割合が『本当の潮流』か『苦肉の策』か判らず住宅をテーマに。 →参考にする掲載作が似た表現ばかりだから、それだけ真似て表現の評価に期待。 住宅というテーマがつまらないのではなく、今も昔も変わらず奥の深いテーマですが、 「どうせ将来住宅しか出来ない」との逃げは、可能性を広げる機会を自ら封じます。 また今の流行にしか対応できない思考と技術は、社会に出た後応用が利きません。 …長くなるので、次回は来年以降の学生に向けたテーマ選びのヒントを書きつつ、 それを通じ、一般の方にも建築や建築家への認識を改めて頂ければと思います。 スポンサーサイト
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