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アーキテクチャ アンド アレコレ
No  8

卒業制作の傾向

例年この時期は、講師を務める大学で、卒業制作の採点を行います。
卒業制作とは、予算も規模も実現性も全く問われず設計出来る一生に一度の課題。
“社会に一石を投じる有益な建築の提案と、そこからの波及の検証”など、都市的規模の製作対象に挑むのが、ずっと昔の先輩から10年前の僕らまで当然でした。

でも最近は、時代のせいもあって、建築の力に夢を託す学生が少ないのか、
テーマ、対象、規模ともに、どんどん縮小傾向にあります。
今年もテーマの多くが住宅。中には一軒屋だけ、家具だけ、ひどいのは検討程度の
平面分割パターンに階段とベッドを記号的に入れただけの「豊かな(?)集合住宅」。
建築が敷地と用途という固有性から逃れられぬ以上、そのテーマの熟考と独創性が
何より大事なのに、そこをサッサと切り上げ、プレゼンだけは「完成です」としたり顔。

この背景には、実際の社会状況に加え、雑誌などメディアの影響もあるのでしょう。
 公共建築は負の遺産とされ、昨今はほとんど建てられなくなってきた。
→雑誌は掲載出来る新築が相対的に住宅ばかり。
→当然『住宅しかないから』ではなく『住宅が面白いから』という切り方での編集。
→多くの学生が掲載割合が『本当の潮流』か『苦肉の策』か判らず住宅をテーマに。
→参考にする掲載作が似た表現ばかりだから、それだけ真似て表現の評価に期待。

住宅というテーマがつまらないのではなく、今も昔も変わらず奥の深いテーマですが、
「どうせ将来住宅しか出来ない」との逃げは、可能性を広げる機会を自ら封じます。
また今の流行にしか対応できない思考と技術は、社会に出た後応用が利きません。

…長くなるので、次回は来年以降の学生に向けたテーマ選びのヒントを書きつつ、
それを通じ、一般の方にも建築や建築家への認識を改めて頂ければと思います。
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